大規模な系のSCF計算を各バイアス電圧において実行するのは非常に計算時間を要します。
バイアス電圧効果の補間法を用いてNEGF法による計算コストを低減することが可能です。
次の手順により補間を行います。
(i) 対象とするバイアス電圧領域から選択した2、3のバイアス電圧についてのSCF計算。
(ii) 透過率および電流を計算するとき、中心散乱領域と右側電極部分に対するハミルトニアンのブロック要素、
と
、さらに化学ポテンシャルについて
次のような線形補間を行う。
ステップ 3の計算において、入力ファイルに次のキーワードを加えることにより補間を行います。
NEGF.tran.interpolate on # default=off, on|off NEGF.tran.interpolate.file1 c1-negf-0.5.tranb NEGF.tran.interpolate.file2 c1-negf-1.0.tranb NEGF.tran.interpolate.coes 0.7 0.3 # default=1.0 0.0補間を行う際には、キーワード「NEGF.tran.interpolate」を「on」に設定して下さい。 上記の例では、キーワード「NEGF.tran.interpolate.file1」と 「NEGF.tran.interpolate.file2」により指定される ファイル「cl-negf-0.5.tranb」と「cl-negf-1.0tranb」は、それぞれ0.5 Vおよび1.0 Vのバイアス電圧下での 計算結果が保存されています。 キーワード「NEGF.tran.interpolate.coes」により重み0.7と0.3が 指定されていますので、 [V]における透過率と電流の値が本補間法により 計算されます。
一次元炭素鎖の電流と透過率について、完全なSCF計算と補間法の比較を図32(a)および(b)に示します。
補間法での計算では、0V、0.5Vおよび1.0Vの三つのバイアス電圧においてSCF計算を行い、他のバイアス電圧における結果は
補間で求めました。比較のために、補間法を用いずに完全なSCF計算から求めた電流値も示しました。
図32から、この簡易的な補間法は、電流および透過率のどちらもにも非常に正確な結果を与えていることが確認できます。
補間の際のSCF計算で用いるバイアス電圧の適切な選択は系に依存しますが、この結果は、バイアス電圧の効果を計算精度を
保ちつつ補間するために、本方法が非常に有用であるということを示唆しています。