ノンコリニアDFT法において任意のスピン方位を持つ電子構造を計算するために、OpenMX Ver. 3.8では制約条件付きDFT法が利用可能です。 制約条件付きDFT法では、スピン方位と初期スピン方位の差がゼロで無い限り系のエネルギーにペナルティーを与える汎関数が付加されます [13]。 ノンコリニアスピン方位に対する制約条件付きDFT法は次のキーワードで利用できます。
scf.Constraint.NC.Spin on # on|on2|off, default=off scf.Constraint.NC.Spin.v 0.5 # default=0.0(eV)キーワード「scf.Constraint.NC.Spin」を「on」もしくは「on2」とした場合にペナルティ関数が導入されます。 「on」の場合、スピンの向きは初期の配向に拘束されますが、全エネルギーの安定化のためにスピンの大きさは変化します。 「on2」の場合、スピンの向きと大きさは共に「Atoms.SpeciesAndCoordinates」にて指定した初期値に固定されます。 キーワード「scf.Constraint.NC.Spin.v」は導入した制約の強さを制御する際に使用します。 各原子に対して制約を付与する場合には以下のようにして下さい。
<Atoms.SpeciesAndCoordinates 1 Cr 0.00000 0.00000 0.00000 7.0 5.0 -20.0 0.0 1 off 2 Cr 0.00000 2.00000 0.00000 7.0 5.0 20.0 0.0 1 off Atoms.SpeciesAndCoordinates>第10列の「1」は制約有り、「0」は無しを意味しています。この方法はスピンの方位だけに制約条件を導入し、 スピンの大きさには制約を課しません。 また、この制約法は「LDA+U」の章で説明したLDA+U計算と同時に適用することが可能です。 実例として、2つの局所スピン間の相対角に対するクロム2量体の全エネルギーと磁気モーメントの依存性を図 30 に示します。 この計算は「work」ディレクトリ中の入力ファイル「Cr2_CNC.dat」を用いて再現できます。