next up previous contents
Next: スピン軌道相互作用の大きさの制御 Up: 相対論計算 Previous: 相対論計算   Contents

全電子計算

半相対論的な方法 [18]または完全相対論的な方法 [5,19]のいずれかで相対論効果を考慮することが可能です。 相対論効果の取扱いを指定するために、キーワード「eq.type」に3つのオプションが用意されています。

   eq.type               sch            # sch|sdirac|dirac
ここで「sch」、「sdirac」、「dirac」によって、Schrödinger方程式 (相対論効果なし)、半相対論的Dirac方程式、 完全相対論的Dirac方程式が選択されます。 半相対論的な方法では、Dirac方程式での全角運動量量子数$j$に依存する項を$j$の縮退度を重みとして平均化し、 方程式を簡略化します。 この方程式に対して動径波動関数の主要成分と副成分の両方を考慮して数値的に解きます。 したがって半相対論的な方法では、運動学的相対論効果(Darwinおよび質量速度項)を明示的に含め、 スピン軌道相互作用は平均化して取扱います。スピン軌道相互作用によるエネルギー分裂は生じません。 一方、完全相対論的な方法では、全角運動量量子数$j$に依存したDirac方程式を動径波動関数の主成分と副成分の両方を考慮して数値的に解きます。 そのため、スピン軌道相互作用によるエネルギー分裂も考慮されています。 表1に3つの異なる方法で計算した白金原子の固有エネルギーを示します。

Table 1: GGA近似 [3]で計算した白金原子の固有エネルギー (単位はHartree)。 Schrödinger方程式 (sch)、半相対論的Dirac方程式 (sdirac)、および完全相対論的Dirac方程式 (dirac)による比較を示す。
state sch sdirac dirac  
      j=l+1/2 j=l-1/2
1s -2612.2560 -2876.3416 -2868.8969  
2s -434.7956 -505.1706 -503.1143  
2p -418.0254 -438.1804 -419.1547 -482.3721
3s -101.2589 -118.6671 -118.0772  
3p -93.3171 -99.1367 -94.8406 -108.7310
3d -78.3951 -77.8404 -76.1768 -79.1659
4s -21.1326 -25.4989 -25.3346  
4p -17.7166 -19.0862 -18.0570 -21.3626
4d -11.4203 -11.2646 -10.9124 -11.5257
4f -3.0221 -2.5775 -2.4568 -2.5821
5s -2.9387 -3.7323 -3.6983  
5p -1.8756 -2.0571 -1.8911 -2.43384
5d -0.2656 -0.2259 -0.2020 -0.24966
6s -0.1507 -0.2074 -0.2079  


next up previous contents
Next: スピン軌道相互作用の大きさの制御 Up: 相対論計算 Previous: 相対論計算   Contents
t-ozaki 2014-01-09