OpenMXのwebサイトで公開されている擬ポテンシャルは原子に対するDirac方程式に基づき生成されています。
相対論的擬ポテンシャルには質量項やポテンシャル勾配項から生じる相対論効果に加え、スピン軌道相互作用
も含まれています。この相対論的擬ポテンシャルを用いて相対論効果を考慮することが可能です。
ただしOpenMXの計算では波動方程式としてShrödinger方程式と同等の微分演算子が用いられていますので、
価電子に対する直接的な相対論効果は無視されています。直接的な効果は小さいことが分かっており、
価電子に対する大部分の相対論効果は内殼電子を通し、間接的に生じます。間接的な相対論効果は擬ポテンシャルの
中に含まれており、結局、内殼電子だけでなくOpenMXの計算で扱う価電子に対してもまた十分な精度で相対論効果が
考慮されています。
スピン軌道相互作用を量子数の縮退度に応じて平均化する方法は「半相対論的扱い」として知られ、
またスピン軌道相互作用を含めた場合には「完全な相対論的扱い」と呼ばれます。
コリニアDFT計算の際には「半相対論的扱い」のみが実行できます。
またノンコリニアDFT計算の際には「半相対論的扱い」と「完全な相対論的扱い」のどちらも利用可能です。