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概要

本節ではAu(111)表面の簡単なモデルを用いて、スピンテクスチャの計算方法を説明します。 以下の2もしくは3ステップの手順により、スピンテクスチャ及びk空間密度行列は解析されます。

1. SCF計算

ディレクトリ「work」に収容された入力ファイル「Au111Surface_FL.dat」を用いて 通常のSCF計算を実行してください。 そして、以下のキーワード「scf.SpinPolarization」と「HS.fileout」を以下のように それぞれ「NC」と「ON」に設定して下さい。

    scf.SpinPolarization         NC    # On|Off|NC
    HS.fileout                   ON    # on|off, default=Off
また、スピンテクスチャを解析する場合にはキーワード「scf.SpinOrbit.Coupling」を「ON」に設定して下さい。
    scf.SpinOrbit.Coupling       ON    # On|Off
正常に計算が完了すると、出力ファイル「Au111Surface.scfout」がディレクトリ「work」に生成されます。 またバンド図を作成するためのキーワードを設定することで、 本モデルAu(111)表面のバンド構造が得られます(図64を参照)。


Figure 64: Au(111)表面でのRashbaスピン分裂を示すバンド構造。 この図はバンドファイル「Au111Surface.Band」により得られました (バンド分散の19章を参照してください)。 赤色の曲線はRashbaバンドを示し、バンドインデックスの55と56に相当します。 Rashbaバンドの色付けはGNUBANDファイル「Au111Surface.GNUBAND」を変更するか、 OMXTool [146]を利用することで実現できます。
\includegraphics[width=12.0cm]{Rashba-Fig1.eps}


2. スピンテクスチャとk空間スピン密度行列の計算

ここでは図 64に示すスピン分裂したRashbaバンドの解析を行います。 ポストプロセスコード「kSpin」により、スピンテクスチャとk空間スピン密度行列が計算できます。 まず、ディレクトリ「source」中で以下のようにコンパイルすることで実行ファイルが得られます。

    % make kSpin
コンパイルに成功すると、実行ファイル「kSpin」がディレクトリ「work」中に生成されます。 次に、ディレクトリ「work」に移動し、以下のように実行してください。
    % ./kSpin Au111Surface_FL.dat
入力ファイルにおいて「kSpin」への適切なキーワードを設定する必要があります。 必要なキーワードに関しては後ほど説明します。 「kSpin」にはk空間スピン密度行列を計算するために四つの方法が実装されています。 FermiLoop, GridCalc, BandDispersion そして MulPOnly です。 この四つの方法の詳細はそれぞれの節で説明されています。 ここでの例「Au111Surface_FL.dat」 は FermiLoopに対するものであり、 FermiLoop53.2節にその解析手順が説明されています。


3. (オプショナル) k空間スピン密度行列の解析

k空間スピン密度行列及びその原子分解を行う解析機能が実装されています。 原子分解から進んでさらに $s$, $p$, $d$, または $f$ 軌道の成分にも分解可能です。 原子・擬原子軌道に分解されたk空間スピン密度行列を解析するために ポストプロセスコード「MulPCalc」が利用できます。 本解析機能に関してはMulPCalc53.6節を参照して下さい。