LDA(GGA)+U法 [16]がキーワード「scf.Hubbard.U」によってコリニア計算とノンコリニア計算で実行可能です。
scf.Hubbard.U on # On|Off, default=offLDA+U法はLDAだけでなくGGAにも適用可能です。占有数を計算するための占有数演算子の選択は 次のキーワード「scf.Hubbard.Occupation」によって指定します。
scf.Hubbard.Occupation dual # onsite|full|dual, default=dual3つの占有数演算子中で、双対演算子(dual)のみが電子数の総和則を満たし、この場合には占有数行列の対角成分の和が 全電子数となります。この総和則はHubbardモデルで最も基本的な保存量です。 占有数演算子「onsite」、「full」、「dual」の詳細については文献[16]を参照して下さい。 原子種を次のように定義した場合、
<Definition.of.Atomic.Species Ni Ni6.0S-s2p2d2 Ni_CA13S O O5.0-s2p2d1 O_CA13 Definition.of.Atomic.Species>それぞれの軌道に対する実効U値(eV単位)は、以下のように指定されます。
<Hubbard.U.values # eV Ni 1s 0.0 2s 0.0 1p 0.0 2p 0.0 1d 4.0 2d 0.0 O 1s 0.0 2s 0.0 1p 0.0 2p 0.0 1d 0.0 Hubbard.U.values>記述の最初は「Hubbard.U.values」で、最後は「Hubbard.U.values」となります。 ユーザーは、全ての基底関数に対して、上記のフォーマットで実効U値(eV単位)を与えなければなりません。 「1s」と「2s」は第1および第2番目のs軌道を、「1s」に続く数値は第1番目のs軌道に対する実効U値です。 同じ規則がpおよびd軌道にも適用されます。 LDA+U法に基づく計算例として、酸化ニッケル固体の状態密度を図27に示します。 ここでニッケルのd軌道に対する実効U値として0 (eV)と4 (eV)が使用されました。 入力ファイルは「work」ディレクトリ中の「Crys-NiO.dat」です。 d軌道にHubbard項を導入したことで、ギャップが大きくなっていることが分かります。 各原子サイトの占有数行列の固有値と固有ベクトルは、次のようにファイル「*.out」中に、 タイトル「Occupation Number in LDA+U and Constraint DFT」から始まり、出力されています。
*********************************************************** *********************************************************** Occupation Number in LDA+U and Constraint DFT Eigenvalues and eigenvectors for a matrix consisting of occupation numbers on each site *********************************************************** *********************************************************** 1 Ni spin= 0 Sum = 8.591857905308 1 2 3 4 5 6 7 8 Individual -0.0024 0.0026 0.0026 0.0038 0.0051 0.0051 0.0888 0.0950 s 0 0.1671 0.0005 -0.0006 0.0040 0.0000 0.0005 -0.0124 0.0000 s 1 -0.9856 -0.0030 0.0039 -0.0227 -0.0000 -0.0072 0.0066 0.0000 px 0 0.0010 0.0004 0.0011 -0.0131 0.0004 0.0001 -0.0261 -0.0291 py 0 0.0010 0.0006 -0.0008 -0.0130 0.0000 0.0009 -0.0271 -0.0000 pz 0 0.0010 -0.0012 -0.0001 -0.0131 -0.0004 0.0001 -0.0261 0.0291 px 1 0.0067 0.0023 0.0066 -0.0792 -0.0161 0.0123 0.5594 0.7062 py 1 0.0068 0.0041 -0.0053 -0.0801 -0.0000 -0.0162 0.5797 0.0002 pz 1 0.0067 -0.0070 -0.0005 -0.0792 0.0161 0.0123 0.5594 -0.7063 d3z^2-r^2 0 0.0002 -0.0781 -0.0105 0.0002 0.0023 0.0014 0.0002 0.0108 dx^2-y^2 0 0.0004 -0.0105 0.0781 0.0004 -0.0013 0.0024 0.0003 -0.0062 dxy 0 0.0004 -0.0009 -0.0002 0.0246 -0.0421 -0.0251 0.0794 -0.0050 dxz 0 -0.0001 0.0008 -0.0010 0.0269 0.0000 0.0478 0.0795 0.0000 dyz 0 0.0004 0.0004 0.0008 0.0246 0.0420 -0.0251 0.0794 0.0050 d3z^2-r^2 1 -0.0023 0.9875 0.1327 -0.0033 -0.0262 -0.0159 -0.0001 -0.0069 dx^2-y^2 1 -0.0040 0.1326 -0.9875 -0.0056 0.0151 -0.0275 -0.0002 0.0040 dxy 1 0.0091 0.0233 0.0052 -0.5578 0.7055 0.4249 -0.0749 0.0157 dxz 1 0.0189 -0.0180 0.0233 -0.5964 -0.0003 -0.7958 -0.0748 -0.0000 dyz 1 0.0091 -0.0110 -0.0212 -0.5578 -0.7052 0.4255 -0.0749 -0.0157 9 10 11 12 13 14 15 16 Individual 0.0952 0.2456 0.9902 0.9974 0.9975 1.0060 1.0060 1.0137 s 0 0.0002 0.9859 -0.0036 -0.0001 0.0000 -0.0000 0.0000 -0.0000 ..... ...それぞれの原子サイトの占有数行列の固有値は、対応する固有ベクトルによって与えられた局所状態に対する占有数となります。 LDA+U法における汎関数は、軌道占有の自由度に複数の極値を持っており、SCF計算の結果は初期占有数近傍に存在する ある極値に収束することがあります。そのため収束した電子状態は最低エネルギーを持った基底状態であるとは限りません。 軌道分極を持つ基底状態を見出すために、次のスイッチによって、軌道分極を明示的に促進する方法が利用できます。
コリニア計算の場合 <Atoms.SpeciesAndCoordinates # Unit=AU 1 Ni 0.0 0.0 0.0 10.0 6.0 on 2 Ni 3.94955 3.94955 0.0 6.0 10.0 on 3 O 3.94955 0.0 0.0 3.0 3.0 on 4 O 3.94955 3.94955 3.94955 3.0 3.0 on Atoms.SpeciesAndCoordinates> ノンコリニア計算の場合 <Atoms.SpeciesAndCoordinates # Unit=AU 1 Ni 0.0 0.0 0.0 10.0 6.0 40.0 10.0 0 on 2 Ni 3.94955 3.94955 0.0 6.0 10.0 40.0 10.0 0 on 3 O 3.94955 0.0 0.0 3.0 3.0 10.0 40.0 0 on 4 O 3.94955 3.94955 3.94955 3.0 3.0 10.0 40.0 0 on Atoms.SpeciesAndCoordinates>
軌道分極を促進させる場合には、最後の列で「on」と指定して下さい。通常の計算を行う場合には「off」と指定します。
軌道分極の促進は各原子サイト毎に行われるため、全ての原子に対して「on」もしくは「off」を指定しなければなりません。
指定を明示的に行わない場合には、「off」が設定されます。
「on」の設定がされた場合は、最初の数回のSCFステップにおいて軌道分極が促進され、それ以降に続くSCFステップでは
通常の計算が行われます。この取扱いにより軌道分極が促進され、多くの場合で基底状態が得られますが、逆に不安定な方向への
収束を導く可能性もあり、万能な方法ではありません。詳細は文献[16]を参照して下さい。