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擬ポテンシャル法の範疇で、スピン軌道相互作用を含む「完全な相対論効果」を
ノンコリニアDFT計算において考慮することができます [12,32,16]。
一方、スピン軌道相互作用の取扱いはコリニアDFT計算ではサポートされていません。
次の二つのステップで「完全な相対論効果」の考慮が可能です。
(1) j依存型擬ポテンシャルの生成
まず最初にADPACKを使用し、j依存型擬ポテンシャルを作成して下さい。
ユーザーの便宜のために、多くの元素に対する
依存型擬ポテンシャルがデータベース Ver. 2019 [149]として利用可能です。
依存型擬ポテンシャルを作成するための詳細はADPACKのマニュアルを参照して下さい。
(2) SCF計算
キーワード「Definition.of.Atomic.Species」の設定中で
依存型擬ポテンシャルを指定した場合、次のキーワード「scf.SpinOrbit.Coupling」でスピン軌道相互作用が導入できます。
scf.SpinOrbit.Coupling on # On|Off, default=off
スピン軌道相互作用は、摂動法として取り扱われるのではなく、擬ポテンシャル法の枠組で自己無撞着に組み込まれます。
このスピン軌道相互作用を介して、二成分スピノル中の
および
スピン成分は直接に相互作用します。
ノンコリニアDFT計算において実空間でのスピン方位はスピン軌道相互作用を組み込んだ場合に意味を持ちます。
スピン軌道相互作用が存在しない場合では、分子や結晶方位に対する相対的なスピン方位はエネルギー的に縮退しており、
実空間でのスピン方位は一義的に決定されません。ただし相対的なスピン間の方位(例えば強磁性と反強磁性)は
スピン軌道相互作用が含めない場合でも物理的に意味を持ち、エネルギー的な差異を生じさせますので誤解しないようにして下さい。
スピン軌道分裂の例として、図 33にノンコリニアDFT法によって計算されたスピン軌道相互作用が(a) 無い場合と(b) ある場合の
GaAs固体のバンド構造を示します。
入力ファイルは「work」ディレクトリの「GaAs.dat」です。
図 33 (a)では分裂は見られませんが、図 33 (b)ではスピン軌道相互作用によって
いくつかのバンドの縮退が解けていることが分かります。
表5 に二つのk点、
点および
点でのスピン軌道相互作用によるエネルギー分裂幅を示します。
他の計算値および実験値と良い一致が見てとれます。
Figure 33:
ノンコリニアDFT法によって計算したスピン軌道相互作用が(a) 無し、(b) 有りの場合のGaAs固体のバンド構造。
Ver.2019のデータベースから、基底関数としてGa7.0-s2p2d2とAs7.0-s2p2d2を、また擬ポテンシャルとして
Ga_CA19.vpsとAs_CA19.vpsを使用。交換相関項はLDAを、
scf.Kgridとscf.energycutoffにはそれぞれ
12
12
12と140 (Ryd)を使用。
また計算における格子定数は実験値(5.65Å)。入力ファイルは「work」ディレクトリの「GaAs.dat」。
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