界面、不純物、欠陥や構造歪み等を含む不完全な系をスーパーセル法によって計算した場合、 得られたバンド構造と角度分解光電子分光法(ARPES)などにより得られたスペクトルとの比較において、 実験で観測される周期性と計算で用いたスーパーセルの周期性が異なることが一般的です。 スーパーセル法で得られたバンド構造は対応する小さなブリルアンゾーン内で折り畳まれており(folding)、 この場合、実験で観測された周期性との整合性をとるために適切な単位胞に対するブリルアンゾーン を用いて再表示する必要があります。 適切な単位胞の選び方は自明ではありませんが、OpenMXではスーパーセル法で得られたバンド構造を、 ユーザーが入力ファイルで指定した単位胞のブリルアンゾーンで展開する(unfolding、アンフォールディング)ことが 可能です[142]。 このバンドアンフォールディング法はコリニア計算、ノンコリニア計算の双方に対応しています。 実験結果との比較を行う以外にも、バンドアンフォールディング法を用いることでそれぞれのバンドがどの擬原子軌道から 構成されているか解析が行う事が可能となり、バンドの物理的背景や、構造不完全性の導入が もたらす影響を議論するのに有用な手法となっています。
以下では、一連の計算を通してバンドアンフォールディング法の機能を紹介します。