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ノンコリニアDFT法の枠組みにおいて(ただしスピン軌道相互作用なし)、スピン螺旋構造を持つ磁性体の計算が可能です。
スピン螺旋計算は一般化ブロッホの定理 [79,80,86,87]に基づいています。
スピン軌道相互作用は一般化ブロッホ定理で課される螺旋対称性を壊してしまうため、
スピン軌道相互作用を含めたスピン螺旋計算はサポートされていないことに留意して下さい。
本機能を用いて発表を行う際には、文献 [79,80]を引用して頂けますと幸いです。
本計算を実行する際には、以下のキーワードを設定してください。
scf.SpinPolarization NC # On|Off|NC
scf.Generalized.Bloch on # On|Off, default=off
scf.SpinOrbit.Coupling off # On|Off, default=off
スピン螺旋構造を指定するため、二つのパラメータを与える必要があります。
第一のパラメータは円錐角です。2種類の螺旋構造が考えられ、一つは円錐螺旋(
)、
他方は平坦螺旋 (
)です。ここで
は円錐角度で、
は磁性原子に対して指定しなければなりません。
図 71(a)に示されるように、
OpenMXではスピン磁気モーメントの方位を用いて円錐(オイラー)角
が指定されます。
円錐(オイラー)角を指定する方法に関しては「ノンコリニアDFT」に関する34章に記載されています。
例えば円錐(オイラー)角は以下のように指定できます。
<Atoms.SpeciesAndCoordinates
1 Fe 0.0 0.0 0.0 10.0 6.0 90.0 0.0 0.0 0.0 1 off
Atoms.SpeciesAndCoordinates>
上記の例では、8列目で
度と指定することで、平坦螺旋構造を与えています。
加えて、9列目で
の初期角度を指定することもできます。
円錐角を固定するためには、「ノンコリニアスピン方位に対する制約条件付きDFTに関する」
38 章の拘束法も利用可能です。
Figure 71:
(a) 磁性原子の円錐(オイラー)角の定義
(b) サイト
の原子の磁性モーメント
.
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スピン螺旋構造の第二のパラメータは螺旋ベクトルqであり、次のキーワードで指定されます。
Spin.Spiral.Vector 0.0 0.0 0.0 # q1 q2 q3
上記のフォーマットにおいて、螺旋ベクトルは逆格子ベクトルで張られた規格化座標で指定されます。
第1、第2、第3列により、
逆格子ベクトル
,
,
に対する
螺旋ベクトルの成分を指定します。
その際に、原子サイト
でのスピン角度は次式で与えられます。
格子ベクトルの並進に伴い、各原子サイトのスピン角度はこの式に基づき回転します。
スピン螺旋計算の例として、図 72にFCC構造のFeの計算結果を示します。
直交座標(
の単位)で定義された (0, 0, 0.6) と (0.2, 0, 1) に安定な螺旋状態が出現します。
スピン螺旋計算の信頼できる結果を得るためには適切なパラメータの設定が必要です。
例えばk点の数、軌道の数、カットオフ半径、そしてカットオフエネルギーなどの選択です。
これらの議論が文献 [87]にありますので、参照して下さい。
また、キーワード「scf.Mixing.Type」により様々な電荷密度混合法が利用できますが、
スピン螺旋計算には「RMM-DIISH」の使用を推奨します。
一連のベンチマーク計算から、「RMM-DIISH」は他の混合法よりも速やかに収束することが分っています。
詳細な説明はSCF収束の13章を参照して下さい。
Figure 72:
スピン螺旋計算によって得られたFe(FCC構造)の(a)。 全エネルギーと(b) 磁気モーメント。
は直交座標で定義された螺旋ベクトル。
計算に用いた入力ファイル「Fefcc-SpinSpiral.dat」はディレクトリ「work」に収容。
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